声優の鉄板練習 外郎売り 現代語訳②
今回も声優、俳優の滑舌練習に利用されることの多い、外郎売りの口上の現代語訳を載せていきます。
外郎売り 現代語訳②
・只今(ただいま)は此の薬、ことのほか、世上に弘まり、ほうぼうに似せ看板を出し、
(現在ではこの薬のは、おもいのほか世の中に広まり、色々なところで偽物が売られており、)
・イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方円斎ばかり、
(いや、本家は小田原なんですが、灰俵、さん俵、炭俵などと色々な名前の偽物が出ていますが、「ういろう」と平仮名で書いているのが、親方円斎だけです、)
・もしやお立会の内に、熱海か、塔の沢へ湯治にお出なさるるか、又は、伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
(もし今集まっている方のなかに、熱海か塔の沢へ湯治に出るか、または伊勢に参拝する際には、必ず門違いしないでください。)
※湯治……温泉にはいって療養すること。
※門違い…間違えて他の家にいくこと。
・お登りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八つ棟、おもてが三つ棟玉堂造り、破風には菊に桐のとうの御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる。
(京都方面へ向かう方から見ると右側で、東京方面へ向かわれる方からすると左側の建物です。八方が八棟で、正面から見ると三棟になっている「玉堂造り」です。破風には、帝から使うことを許された菊に桐の薹の御紋が付いておりまして、それほどに由緒、来歴の正しい店で作られた薬です。)
破風…屋根の部分にできた三角形の造形部分のこと。
読み方のポイント
- 感情を入れてみよう!
今回取り上げたシーンの冒頭、
・只今(ただいま)は此の薬、ことのほか、世上に弘まり、ほうぼうに似せ看板を出し、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方円斎ばかり、
ですが、さて皆さんは、自分が売っているものの偽物が世の中に出回ったときにどう思いますか?
・売り上げが減ってしまい悲しい。
・偽物を売るなんて許せないと怒りが沸いてくる。
・自分の商品に自信があるので、クオリティのひくいパクり(平仮名でかいてあるのが親方だけって、みたら一瞬でわかるじゃん笑)商品を馬鹿馬鹿しく思う。
色んな感情が出てくるかと思います。
悲しいなら、話している途中で、収入が減り生活が苦しくなり、奥さんや子供に迷惑をかけてしまっている現状を思い出して、涙声になってくるかもしれませんよね。
また、あなたはどうしてこの話をしようと思ったのでしょうか?
それはこの文に続く言葉、
・もしやお立会の内に、熱海か、塔の沢へ湯治にお出なさるるか、又は、伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
から分かるように、[とにかく間違えないで!!]
ということが伝えたいんですよね。
ならば、「必ず門違いなされまするな」は念押しするように強く、印象的に言わなくてはいけません。
そんな風に、
- どうしてこの話をしようと思ったのか。
- この話をするときには、自分はどのように思うのか。
を考えながら、自然に喋るように(あるいは少し大袈裟に)心を動かしながら言ってみてください。
滑舌以外にも、こんな活用法方もありますよという紹介でした。